NASAの探査機OSIRIS-RExは、7年の歳月と約40億マイルの旅を経て、2023年9月24日、ユタ州の砂漠に着陸しました。この探査機は小惑星ベンヌから採取されたおよそ約227gの貴重なサンプルを持ち帰りました。実はこのサンプルを持ち帰るために、約11億6000万ドル(約1742億円)という巨額の費用が発生しています。しかし、世界にはまだまだ高額な物質が存在するのです。
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宇宙岩石の取得には莫大なコストがかかる
この小惑星のサンプルは、1グラムあたり470万ドル(約7億円)に相当します。これは、金の価格の約7万倍です。
地球に初めて持ち帰られた地球外の物質は、アポロ計画からもたらされました。1969年から1972年の間に、6回のアポロ・ミッションが382kgの月のサンプルを持ち帰りました。アポロ計画の総費用は、インフレ調整後で2570億ドル(約38兆6059億円)でした。これらの月の石は、1グラムあたり67万4,000ドル(約1億円)と比較的お買い得であり、もちろんアポロには有人宇宙飛行のための技術を実証するという付加価値もありました。
NASAは2030年代初頭に火星からサンプルを持ち帰り、古代の生命の痕跡があるかどうかを確認する計画を立てています。マーズ・サンプルリターン・ミッションは、450gのサンプルチューブ30本を持ち帰ることを目指しています。パーセべランス探査機はすでに10個のサンプルを回収しています。
しかし、このミッションは複数のロボットや宇宙船を含む複雑なものであるため、コストは膨らんでいます。サンプルを持ち帰るには110億ドル(約1兆6523億円)かかる可能性があり、そのコストは1グラムあたり2400万ドル(約36億円)と、ベンヌサンプルの単価の5倍になります。
無料の宇宙岩石
太陽系から毎日50トン近くの宇宙岩石が地球に降り注いでいます。ほとんどは大気圏で燃え尽きてしまいますが、地上に到達したものは隕石と呼ばれ、そのほとんどは小惑星からのものです。隕石は、回収するのが難しいため、高価になることがあります。ほとんどの隕石はコンドライトと呼ばれる石質で、1グラムあたり50セント(約75円)から購入できます。コンドライト隕石は通常の岩石とは異なり、45億年前の太陽系誕生時に宇宙空間で溶けた液滴として形成されたコンドリュールと呼ばれる丸い粒で構成されています。
鉄隕石は、大気圏を通過する際に表面が溶けたために生じた黒っぽい地殻と、長い金属結晶の内部模様によって区別されます。1グラムあたり1.77ドル(約265円)以上の価格がついています。パラサイトは、カンラン石という鉱物が混入した石鉄隕石です。カットして研磨すると、半透明の黄緑色になり、1グラムあたり35ドル(約5,257円)を超えることもあります。
多くの隕石は月と火星から届いています。600個近くが月からのものとされており、最も大きなものは重さ4ポンド(約1.8kg)で、1グラムあたり166ドル(約24,936円)の価格で売られています。火星から来た隕石は約175個確認されており、1グラムあたり388ドル(約58,285円)です。
研究者たちは、隕石の着陸軌跡から小惑星帯への経路を予測したり、異なるクラスの小惑星と組成を比較することで、隕石がどこから来たかを知ることができます。しかしこれらの無料サンプルの限界は、それらが月や火星のどこから来たか知る手段がなく、科学的有用性が制限されていることです。また、地球に着陸するとすぐに成分が変化するため、その中に含まれる微生物が地球外生命体であるかどうかを判断するのが困難です。
高価な元素と鉱物
元素や鉱物の中には、希少であるがゆえに高価なものがあります。周期表の単純な元素は価格が低く、100グラム当たり炭素は2.40ドル(約360円)、鉄は1セント(約1.5円)以下、アルミニウムは19セント(約28円)です。銀は1グラム50セント(約75円)、金は1グラム67ドル(約10,000円)です。
また7つの放射性元素は自然界では極めて希少であり、実験室での生成が困難です。NASAの火星サンプルの価格を凌駕するほどです。この中で最も高価なポロニウム209は、1グラムあたり490億ドル(約7兆3607億円)もします。
宝石も高価なものがあります。高品質のエメラルドは金の10倍、ホワイトダイヤモンドは金の100倍の価格です。ダイヤモンドの中には、ホウ素の不純物によって鮮やかな青色を帯びたものもあります。これらのダイヤモンドは世界でもごくわずかしか採掘されておらず、1グラムあたり1900万ドル(約28億円)であり、火星のサンプルに匹敵します。
最も高価な合成物質は、炭素の小さな球状の「ケージ」の中に窒素原子を閉じ込めたものです。ケージ内の原子は非常に安定しているため、計時にも使用できます。内包フラーレンは、非常に正確な原子時計を作成するために使用できる炭素材料で、1グラムあたり約1億4100万ドル(約28.5億円)かかることがあります。
最も高価な「反物質」
反物質は自然界に存在しますが、反粒子が生成されるとすぐに粒子と消滅し、放射線を発生させるため、非常に稀です。CERNの粒子加速器は1分間に1000万個の反陽子を生成できます。これはとても多いように聞こえますが、この速度では数十億年かかり、1グラムあたり3.5×10の16乗ドル(約530京円)かかります。
スタートレックで想定されているような、物質と反物質の消滅を動力源とするワープ・ドライブは、もう少し時間がかかるでしょう。
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