200円前にスペイン南部の洞窟で発見されたサンダルが、最新の放射性炭素年代測定の結果、6000年前のものであることが判明しました。この発見の貴重さについて、科学メディア「arsTECHNICA」が解説しています。
*Category:サイエンス Science *Source:arsTECHNICA ,EurekAlert ,ScienceAdvances
中石器時代の植物で作られた遺物を発見
1831年、地元の地主によってクエバ・デ・ロス・ムルシエラゴス(コウモリの洞窟)が発見されました。その後、この洞窟は方鉛鉱の採掘場となり、鉱夫たちによって数体の部分的にミイラ化した遺体や、バスケット、木製の道具、その他の遺物の入った回廊が発見されました。そして10年後、マニュアル・デ・ゴンゴラ・イ・マルティネスという考古学者によって、散乱していた現存する遺物の収集が行われました。彼は68人分の人骨を記録し、これらの遺物はその埋葬に関連していると仮定しました。
植物由来の材料が何千年も保存されることはめったにありません。しかしクエバ・デ・ロス・ムルシエラゴスには特殊な地質環境が整っていたのです。この洞窟は湿度がほとんどなく、アンゴストゥラス峡谷は洞窟の狭い上部の入り口に乾いた風の流れを通します。風は洞窟内を進むにつれて冷やされ、乾燥し、速度が増すため、植物を食べるバクテリアが繁殖しにくくなるのです。
また共著者であるバルセロナ自治大学のマリア・エレーロ・オタル氏は次のように述べています。
The esparto grass objects from Cueva de los Murciélagos are the oldest and best-preserved set of plant fiber materials in southern Europe so far known.The technological diversity and the treatment of the raw material documented demonstrates the ability of prehistoric communities to master this type of craftsmanship, at least since 9,500 years ago, in the Mesolithic period.
— 引用:EurekAlert
訳:クエバ・デ・ロス・ムルシエラゴスのエスパルトの遺物は、これまで知られている中で、南ヨーロッパで最も古く、最も保存状態の良い植物繊維の遺物です。記録されている技術的多様性と原材料の処理は、少なくとも9500年前の中石器時代から、先史時代のコミュニティがこの種の職人技を習得していたことを示しています。
クエバ・デ・ロス・ムルシエラゴスの目録には2種類のサンダルがありました。初歩的な「靴紐」の痕跡がないシンプルなものと、足首の周りで紐で結ばれ、親指と人差し指の間にフィットする中芯スタイルものです。研究チームは、シンプルなサンダルと中芯サンダルの両方を分析し、新石器時代のものであることを確認しました。
さらに、加速器質量分析(AMS)放射性炭素年代測定とベイズモデリングを組み合わせた、より高度な技術がを使った分析が行われました。すると、発見されたバスケットの一部は中石器時代までさかのぼり、前期完新世の狩猟採集民(前7500-4200年頃)と中期完新世の農耕民の2つの異なる段階から採取されたものであることを突き止めました。バスケットはサンダルよりもさらに古いものだったのです。この地域の狩猟採集民や初期の農耕民の間で籠編みが行われていたことを示す初めての直接的な証拠となりました。
共著者であるアルカラ大学のフランシスコ・マルティネス・セビージャ氏は「アルブニョールのクエバ・デ・ロス・ムルシエラゴスから出土したエスパルト・バスケットの新しい年代測定は、完新世初期の最後の狩猟採集社会を理解するための窓を開くものです。籠細工の品質と技術の複雑さは、南ヨーロッパに農耕が到来する以前の人類社会についての単純化された仮定に疑問を抱かせます」と話します。
Source: app