米国の自動車市場は、急速にEV(電気自動車)シフトを進めようとしています。米カリフォルニア州では、2035年以降にガソリンやHVの新車販売を禁止する規制案を決定しました。
日本よりも先に進んでいる米国でのEVシフトは、非常に広範囲の労働者に影響を与えています。これについて、海外メディア「CNBC」が解説しています。
*Category:テクノロジー Technology|*Source:CNBC ,techcrunch
アメリカ中西部の〝惨状〟は日本でも起きるのか?
自動車製造は、米国で最も重要な産業の1つです。2021年3月には、国内総生産のおよそ2.7%が、アメリカの自動車の生産と販売に関連していました。最盛期の1950年には、デトロイトというたった1つの都市で、世界で生産される自動車の2台に1台が製造されていました。
米国では、EVへの投資をめぐり、かつてないほどの競争が繰り広げられています。例えば、米EVメーカーのRivianは、50億ドル(約7,000億円)のバッテリー及び組立工場をアトランタ郊外に新設することを明らかにしました。
米国のEVトップメーカーといえばテスラです。同社の時価総額は世界の自動車メーカーの中でもトップとなり、9月現在時点で約9390億ドル(約134兆円)を超えました。
しかし、自動車メーカーという括りで見ると、米国にはゼネラルモーターズ、フォード、クライスラーという3つの大企業があることを忘れてはいけません。これらの世界的メーカーが、急成長するテスラに対抗しようとしているのです。
こうした変化は、アメリカ中西部経済の広大な範囲を混乱に陥れるかもしれません。ミシガン、インディアナ、オハイオなどの州では、何万人もの人々がガソリンエンジン用の部品を作っています。
しかし、EV需要が急増することで、企業は迅速に方向転換をする必要があります。まず知っておくべきことは、電気自動車と従来の自動車では、製造方法が異なるということです。
ガソリン車の内燃機関には、クランクシャフト、スパークプラグ、ラジエーターがあります。一方EVはバッテリーが大半を占めており、必要な部品数が圧倒的に少ないのです。試算では、約30%の部品が削減されるといわれています。
ボディやシャーシ、ホイールなどは従来の自動車と変わらない用に思えますが、内燃機関の周りにあるオイルやガス、その他多くの流体を駆動するためのラインは、EVには必要ありません。
工程は違えど、どちらのタイプの車も、専門的な知識を持った作業員によって作られています。しかしEVとなると、同じ車でも全く異なる知識が必要となります。
専門的な仕事のほとんどを行うのは、中西部に多く、南米、アジアにも広がるOEMと呼ばれる二次的な工場です。この何百、何千というサプライヤーが自動車産業の多様化とともに消費者向けの自動車部品を生産しています。
しかしEVシフトには、これまで車を製造してきたエンジニアはもちろん、現在まさに技術を学んでいる最中の学生も悩まされています。政府や自動車会社が電気自動車の製造に取り組む中、このような部品メーカーも大きな変化を迫られているのです。
2022年6月現在、自動車製造業に従事している人は100万人強です。その半数以上は、EVシフトの影響を受ける可能性のある部品取引に従事しています。
EVシフトをさらに加速させるのが、バイデン大統領が署名したインフレ抑制法です。この法案では、電気自動車、風力タービン、ソーラーパネルの新しい製造拠点を建設する際には、100億ドル(約1.4兆円)の税額控除が受けられます。さらに20億ドル(約3,000億円)は、古い工場の改修に充てられます。新たな製造拠点ができることによって、今の労働力から別の労働力に移行するかもしれません。
この変化は、これまでガソリン車の経済に頼ってきた米国中西部の地域経済を混乱させはじめています。そして、これは米国だけの話ではありません。米国のインフレ抑制法では、北米で組み立てられたEVを購入した場合、最大7500ドル(約107万円)の税額控除を受けられるというものが含まれています。
当然ながら、この法律はEVを含む〝グリーン産業〟を促進すると同時に、古い自動車産業を衰退させるものです。このようなグリーン産業に優位性があることは、テスラの時価総額も明確に表しています。
そして、アメリカ中西部ではすでに深刻な問題となりつつあるこれらの現象を引き起こしている理由はすべて日本にも当てはまります。
最高益を達成したトヨタと言えども、EVへのキャッチアップが遅れれば世界市場にそっぽを向かれるのは明らかですし、日産、ホンダなどのメーカーもそれは同じです。
部品点数の減少による工場労働者の解雇、OEM企業の衰退が進む中〝グリーン企業〟へは補助金が支払われるという状況は全て日本でも起こりうることなのでテスラ躍進&EVシフトで進む「雇用消失」は日本人も他人事ではないのです。
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