グアムのアンダーセン空軍基地には「B-2」という世界最先端のステルス爆撃機が2機配備されています。この爆撃機は1機で14億ドル(約1,800億円)という莫大な金額です。また、世界最先端の秘密技術を搭載しているため、非常に重要な爆撃機でもあります。
しかしこのステルス爆撃機が「たった30秒」で失われるという事件が発生。B-2に一体何が起きたのかを、海外YouTubeチャンネル「The Infographics Show」が解説しています。
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B-2があっけなく墜落してしまった原因とは?
B-2は、太平洋地域における米国の防衛任務の一環としてグアムに配備され、これまでに1機も事故や戦闘で失われたことはありません。
B-2は、空中給油を行えば1万6000㎞をはるかに超える航続距離を持つステルス爆撃機で、太平洋である任務を行っていました。その任務とは、有事に相手空域に侵入して重要な軍事および通信インフラを攻撃することです。世界最先端の爆撃機であるB-2は、このような任務を遂行できる世界で唯一の航空機であり、過去に何度もこれを成し遂げてきました。
B-2の難点は特殊な設計のステルス機であるため、操作が難しいことです。B-2の制御はコンピュータに依存しており、このシステムが無ければ、パイロットはB-2を長時間安定飛行させることができません。 しかし、今回の墜落事故はこのシステムの故障が原因ではありませんでした。
B-2の事故は離陸時に起こりました。1機目のB-2が離陸すると、2機目のB-2もすぐに離陸態勢に入ります。この時点では、まだパイロットは異変に気がついていません。
B-2は、世界で最も維持費のかかる航空機であり、最もメンテナンスの多い航空機です。1回の飛行には10万ドル(約1,300万円)以上のメンテナンス費用がかかり、メンテナンスには100時間以上の工数がかかります。しかし、世界最先端の飛行技術やステルス技術を扱っている以上、このメンテナンスは必要不可欠です。ただ、その日の朝、整備班は重大なミスを犯してしまいます。
B-2の飛行翼の設計は非常に難しく、パイロットは離陸するときでさえコンピュータの助けを必要とします。今回、離陸してすぐに3つの空気圧センサーから警告がでました。
B-2の対気速度や高度などは、センサーから送信されるデータによって計測されます。しかし、今回のデータは不正確なモノでした。
なぜなら、B-2の帰還までの数日間、グアムは大雨に見舞われ、その雨が機体のセンサー内部に侵入し「結露」を発生させていたからです。結露が発生している状態だと、正確なデータを収集することはできません。
その結果、コンピュータは不正確な迎角を計算し、離陸時にB-2がわずかに前方に傾いていると判断してしまったのです。車輪が地面から離れてからも、コンピュータはまだ高度を上げるには角度が悪いと判断し、自動で機体を30度上向きに修正しました。また、センサーの不具合は、機体が実際の速度よりも速く動いているという勘違いもしていました。
実際の速度は遅いため、機体を急激に上向きにすることは大きな抵抗を引き起こし、機体のバランスを悪化させます。そして、数秒後には機体は左に傾き始め、左翼が地面に接触してしまったのです。パイロットは機体を救おうと操縦桿を握りましたが、回復不可能な失速状態でした。
B-2が滑走路に墜落し、大火災に見舞われる数秒前に、2人のパイロットは脱出し、怪我は追ったものの奇跡的に生還しました。また、幸いなことに、B-2には爆弾が搭載されていなかった為、最小限の被害に収まりました。
しかし、米軍は結露を見逃したために、たった30秒の間で14億ドル(約1,800億円)の最新鋭機を失ってしまったのです。その後すぐに6機のB-52が同基地に配備されたことからも、B-2が(システムの脆さを除けば)いかに優秀な機体だったかがわかります。
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