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骨のない奇妙な生物「タリーモンスター」の謎が解明される

イカのようなヒレに、棒のような目、細長い口の先には歯か爪のようなものがついている、なんとも奇妙な生物が3億年前に生息していました。長らく議論されていたこの生物についての謎がついに解明されました。海外メディア「sciencealert」が詳しく解説しています。

*Category:サイエンス Science *Source:sciencealert,東京大学

古代生物タリーモンスターとは


70年近く前に発見されて以来、Tullimonstrum gregarium(別名タリーモンスター)の正体は、科学者を困惑させてきました。脊椎動物であるのか、無脊椎動物であるのか、研究結果は様々で、何年も議論が続いていました。しかし東京大学で古生物学の研究をしていた三上智之氏(現在は国立科学博物館特別研究員)は「無脊椎動物か脊椎動物かという謎は解けた」と言います。

タリーモンスターの新しい詳細が明らかに

「複数の証拠に基づき、タリーモンスターの脊椎動物仮説は成り立たなくなりました。最も重要な点は、タリーモンスターが頭部領域で体から伸びる分節を持っていたことです。この特徴は、どの脊椎動物の系統でも知られておらず、非脊椎動物との親和性を示唆しています」

化石ハンターのフランシス・タリーによって、1955年にイリノイ州のメゾンクリーク化石層で最初の化石が発見されました。それ以降、タリーモンスターの化石標本は数多く発見されており、それらは実に奇妙な海洋獣の姿を描いていました。体長は15cmほどで、尾にはイカのようなヒレがあり、額には棒のような目が出ていて、細長い口の先には歯か爪のようなものがついています。そのあまりの奇妙さに、基本的なレベルでの分類すら困難でした。

どの化石からも骨構造は見つかっていませんが、それ自体は診断材料にはなりません。脊椎動物の魚の一部に見られるような軟骨の骨格は、骨と同じようには保存されないからです。タリーモンスターの特徴のいくつかは、ヤツメウナギのような顎のない軟骨のある海洋脊椎動物に見られる構造と一致すると解釈されています。しかし、他の科学者たちは、これらの特徴を脊椎動物に似ていると断定的に解釈することはできないと主張し、何年も議論が繰り返されていました。


そこで三上たちは、この論争に決着をつけるべく、徹底的な調査を行いました。タリーモンスターの標本150点以上、マゾンクリーク化石層から収集した他の生物の化石70点以上を、高解像度3DレーザースキャンとX線マイクロコンピュータ断層撮影を行いました。

そして、脊椎動物の特徴に類似していると解釈されていた構造について、入念な調査を行いました。ミオメアという骨格筋組織のブロック、3つに分かれた脳、軟骨、ひれすじなどです。

結果として判明したのは「脊椎動物に見られる特徴に匹敵しない」ということ。ミオメアと解釈されていたものは、脊椎動物に見られる構造とは明らかに異なっており、脊椎動物のような脳、エラ袋、軟骨、ヒレ筋は全く存在しなかったのです。さらに、口さきにある「歯」は、これまでの比較に反して、ヤツメウナギのものとは大きく異なっていました。


タリーモンスターは地球上のどの生物とも異なっていたため、研究者がその位置づけを理解するのに苦労したのも無理はありません。無脊椎動物であることを突き止めた研究チームが次に取り組んでいるのは、その無脊椎動物の種類を明らかにすることです。タリーモンスターの秘密は、全てが明かされたわけではないのです。

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