人気SF映画「ターミネーター」には、体を液化させるアンドロイド「T-1000」が登場します。当然、このアンドロイドは映画の中の話で実際には存在しません。
しかし、研究によって「T-1000」のように「個体から液体」「液体から固体」に変化できる金属製ロボットが開発されました。このロボットについて、海外メディア「Ars Technica」が解説しています。
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体の形状を「変える」ロボットとは?
ロボットといえば、硬い素材で作られたものというイメージがありますが「ソフトロボティクス」という分野は、それとは異なるアプローチです。ソフトロボティクスとは、動物が持っているような柔軟な素材でロボットを作ろうというものです。もし、柔軟な素材でロボットを作ることができたら、災害時の生存者捜索で狭い場所に入っていくことができたり、義肢装具やバイオメディカルデバイスとして活用できる可能性があります。
研究者たちは「ナマコ」の性質に注目しました。ナマコは、柔らかい円筒形の体に口があり、その周りを伸縮自在の触手が取り囲んでいる生物です。そして、ナマコは体の壁を形成するコラーゲンを自在に緩めたり締めたりできます。つまり、ナマコはこのコラーゲン線維を緩めることによって、体を液化させ、小さな隙間やくぼみから体を出すことができるということです。
今回、開発されたロボットは、固体状態と液体状態を行き来できる磁気活性相転移物質(MPTM)が使用されていて、ナマコのように体の形状を変えることができます。
MPTMは、強磁性体であるネオジム・鉄・ボロン微粒子を純ガリウムに埋め込まれており、交番磁場で加熱すると溶けて液体になり、磁場を取り除くと常温で再固体化します。また、この材料は融点が30.6℃のため、室温では固体のまま留まることが可能です。固体の状態では機械的強度に優れ、高荷重に耐え、多目的な移動ができます。一方、液化すれば、必要に応じて伸長、分割、合体することができます。
実際に、MPTMで作られたロボットが、牢屋から脱出する様子を確認してみましょう。
レゴのようなロボットが牢屋の中に入っています。現状の大きさでは牢屋から脱出することはできません。
しかし、加熱することによって体が固体から液体に変化し始めます。
液体となったロボットは牢屋の隙間から脱出しました。
そして脱出後は、元の形状に戻っています。本当に、ターミネーターに登場する「T-1000」のようです。
この技術によって実現できるイノベーションの1つが「無人で回路を組み立てる」というもの。MPTMの無線機能と金属のような導電性を利用して、MPTMデバイスを遠隔操作し、発光ダイオード(LED)を回路の特定の場所まで運びます。
そして、加熱することによってMPTMは溶け、ピンとはんだ付け用パッドとの間に電気的接続を形成しました。
その後、冷却してはんだ付けを完了し、LED回路を完成させることができました。
さらに、MPTMを使って体内の異物を外に運び出したり、薬の拡散を速める研究も進められています。
もちろん、MPTMでターミネーターが作られることはないでしょう。しかし遠い未来に似たロボットが作られ、未来から送られてくる…なんてことも、もしかするとあり得るかもしれません。
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