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核兵器より怖い「ウィルスの機能獲得研究」ヤバすぎる実態

もし、人工的に作られた危険なウイルスが研究所から漏洩してしまったら、何が起こるのでしょうか?遺伝子操作されたウイルスの研究は、実は思っている以上に危険です。このウイルス研究のリスクについて、海外YouTubeチャンネル「TED-Ed」が解説しています。



*Category:テクノロジー Technology *Source:TED-Ed

人工的にウイルスを作り出すことの危険性


1979年、ソビエト連邦のスベルドロフスクにある研究所で小さな事故が発生しました。ある作業員が、換気システムのエアフィルターが詰まっていたので取り外したのですが、取り付けるのを忘れたまま通常通り作業を開始してしまったのです。

しかしこの小さな事故は、大きな問題へと発展します。この研究所は、炭疽菌を大量に製造する生物兵器施設だったのです。炭疽菌は、吸い込んで感染した人の90%を死亡させる危険なウイルスです。この炭疽菌の粉末は何時間も空中に浮遊し、64人が死亡しました。


このような生物兵器の製造は現代では禁止されていますが、科学者らが懸念しているのはこのような危険なウイルスだけではありません。研究者は1970年代から、微生物のDNAを操作して、それまで持っていなかった能力を持たせることに取り組んできました。これは「機能獲得」と呼ばれる作業で、遺伝子操作されたウイルスは、ワクチン製造、遺伝子治療、がん治療などに利用されています。

しかし「機能獲得」の領域には、科学者がスーパーバグを作り出すという、激しく議論される問題があります。これはePPP「enhanced Potential Pandemic Pathogens(潜在的パンデミック病原体の強化)」と呼ばれ、エボラ出血熱や鳥インフルエンザなどの有名なウイルスの変種を、より感染しやすく、より致死的になるように操作することです。この種の研究は、より高いリスクを伴います。もし、異常に危険なウイルスが1つでも研究室から漏れたら、世界的なパンデミックを引き起こし、人類に壊滅的な被害を与える可能性すらあるのです。


ePPPを開発するウイルス学者たちは、この研究が将来のパンデミックに備えるのに役立ち、治療を迅速に開始し、命を救う可能性があると主張しています。例えば、2010年代初頭、複数の研究チームが、哺乳類の間で空気中に拡散する新しい能力を持つ鳥インフルエンザの致死的な株を作成したことがあります。このプロジェクトの支持者は、このePPPを作成することで、最悪のケースを想定したウイルスに関する重要な情報を、制御された条件下で学ぶことができると主張しました。

一方、多くの批評家は、鳥インフルエンザが野生で実験室のように進化するかどうかは不明であると主張。この危険なウイルスを研究することによって得られる知識は、そもそもウイルスを作り出すリスクに見合うものではないと述べました。両者とも命を救おうとしていますが、最良の方法については意見が一致していません。


しかし、ePPP研究所の漏洩が壊滅的な被害をもたらす可能性があることは、誰もが認めるところです。危険な病原体を扱う研究所では、そこで働く科学者や外界を守るために、数多くの安全機能を備えています。空気を除染する換気システムや専用の酸素を備えた気密性の高い「宇宙服」、時には自然災害による閉鎖環境を侵害するのを防ぐために、建物同士が入れ子になっていることもあります。しかし、この設備には多額の費用がかかってしまいます。

また、技術に問題がなくても、最も一般的なミスである「ヒューマンエラー」が発生する可能性があります。ソ連の炭疽菌流出事故が良い例です。

他にも2009年には、研究者が誤ってエボラ出血熱に汚染された注射針を刺してしまい、研究者の命と治療者の命が危険にさらされました。2014年には、天然痘の原因となるウイルスが入った6本のバイアル瓶が、何十年も忘れ去られ、安全でない倉庫から発見されたこともあります。また同年、アメリカ疾病予防管理センターの科学者は、比較的無害な鳥インフルエンザのサンプルを、実験室で育てた致死的な変種に無意識に感染させ、その感染されたサンプルを米国農務省に出荷してしまいました。


これらの事件は、幸いにも大きな問題には繋がりませんでした。しかしePPPの漏洩が致命的な結果をもたらす可能性があることから、この種の研究を全面的に中止すべきであるという意見は絶えません。


リスクを最小限に抑えるためにできることは何でしょうか。まず、過去の失敗を検証することで、ヒューマンエラーを減らす努力をすることができます。また、専門家の中には、研究所のプロトコルを適応させ、ヒューマンエラーを最小化するのに役立つような国際的なデータベースを作成することを提案する人もいます。

また、健全で十分な資金を持つパンデミック早期警戒システムがあれば、実験室からの漏出であれ自然流出であれ、あらゆる病気の発生から私たちを守ることができます。このようなグローバルな連携システムを開発することは非常に困難ですが、パンデミックに国境や政治は関係ありません。パンデミックの脅威を世界が知った今、各国が連携して悲劇を防ぐことが求められてるのです。

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