作曲家のルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは、1827年3月27日に亡くなる前に、将来誰かが自分の病気を解明してくれることを願い、遺書とともに毛髪を残していました。
今回、ドイツのマックスプランク進化人類学研究所がベートーヴェンの髪を保存していたDNAを分析し、ゲノムを初めて解読。その結果が、学術誌「Current Biology」に掲載されています。
*Category:テクノロジー Technology *Source:Current Biology ,sciencealert ,BBC ,CNN
ベートーヴェンの髪をDNA解析した結果
研究チームはまず、英国、ヨーロッパ、米国の公共および個人のコレクションから、合計8本の毛髪サンプルを分析することから始めました。その結果、2本はベートーヴェンのものではないことがわかり、もう1本は損傷が激しくて分析できないことがわかりました。
これらの毛髪をDNA解析した結果、分かったことは以下のとおりです。
分かったこと①:ベートーヴェンが鉛中毒だった説は間違い
以前のベートーヴェンの髪の毛の研究では、彼が鉛中毒だったのではないかという説がありました。当時の鉛の器で飲む文化や、鉛を使った当時の医療を考えれば、驚くような説ではありません。
しかし今回の研究で、この髪の毛がベートーヴェンのものではなかったことが判明。この髪は謎の女性のものだったそうです。
分かったこと②:ベートーヴェンは肝臓が弱かった
今回の解析で、ベートーヴェンのDNAからは「肝疾患の重大な遺伝的危険因子」がいくつか見つかりました。彼はまた酒をよく飲んでおり、これが彼の早死につながった可能性があると示唆されています。
19世紀初頭のウィーンの基準では、彼の飲酒量は控えめであったと同時代の人は記録していますが、それでも肝臓に有害であると今日知られている量のアルコールを摂取していたようです。ベートーヴェンと親しかった友人は、ベートーベンが毎日昼食時に少なくとも1リットルのワインを飲んでいたと書いています。
分かったこと③:ベートーヴェンはB型肝炎の感染していた
研究ではさらに、ベートーヴェンが遅くとも最後の病気の数ヶ月前に、B型肝炎ウイルスに感染していた証拠が見つかったとのこと。これは、間違いなくベートーヴェンの容態悪化につながったはずです。
肝臓病の遺伝的危険因子とB型肝炎の感染に加え、飲酒はベートーヴェンの晩年の健康にとって大きな問題だったのかもしれません。
分かったこと④:ベートーヴェンの父は婚外子だった可能性がある
研究チームは、ベートーヴェンの遺伝子プロファイルを確立すると、ベルギーに住む親族のDNAと比較しました。ところが、なんとDNAの完全な一致は確認できなかったそうです。これは、一族の歴史のどこかで、ベートーヴェンの父方に婚外恋愛があったことを示しています。
研究者の1人は、ベートーヴェンの父親は、作曲家だった祖母と祖父以外の男性との間に生まれたのではないかと推測しています。ベートーヴェンの父親の洗礼記録はなく、祖母はアルコール依存症であったことが知られており、ベートーヴェンの祖父と父は、難しい関係でした。これらの要素は、婚外子だったことを示している可能性があると研究者は述べています。
Source: app