ロシアは最近、西側諸国に対して核兵器の使用をほのめかせています。もしもロシアが核ミサイルを実際に発射した場合、世界はどうなってしまうのでしょうか?このシナリオについて、海外YouTubeチャンネル「The Infographics Show」が時系列だてて解説しています。
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ロシアが核ミサイルを発射するまでの「24分間」のシナリオ
ロシアは何週間も前からNATOに武器・弾薬をウクライナに提供しないよう脅してきました。そして、プーチン大統領はNATOの武器がウクライナに持ち込まれた場合は軍事行動を取ると宣言しました。その後、ウクライナ国境のすぐ近くで、NATOの車列が2機のロシアのSu-25によって空爆されました。
非武装の輸送隊は、ロシア軍の戦闘機が放った銃撃とロケット弾で壊滅し、生存者はいません。
◇ 【発射まで残り23時間】
輸送隊が攻撃されたことは、米国大統領にも伝わります。輸送車にはポーランド兵が搭乗していました。この兵士は、ウクライナ兵が米軍のC-130から荷物を降ろし、ポーランド領内で必要な軍需品を梱包するのをサポートしていました。
兵器の輸送は、ウクライナの外にいる限り安全でしたが、国境を越えた途端、ロシアはこれを合法的な軍事目標と宣言したのです。
米国大統領は非常に難しい決断を迫られ、すぐにNATO諸国の首脳と会議をしました。
◇ 【発射まで残り19時間24分】
NATOはロシアに対し、輸送隊への攻撃は第5条の対応となると警告しました。長く熱い議論の後、米国、英国、フランス、スペイン、ノルウェー、ドイツ、ポーランドは、1国への攻撃は全員への攻撃であると結論付けました。
他のNATO加盟国にも、この結論が共有されます。また、攻撃は直接NATO領域内ではなかったため、トルコのような一部の同盟国は深刻な懸念を抱いていました。
米国、英国、フランス、ポーランド、ドイツは、ロシアによるポーランドへの攻撃、あるいはウクライナを支援するポーランドの輸送機や兵站部隊への攻撃の可能性に備えました。
5カ国はロシアに強いメッセージを送ることを決定しました。そして、そのような事態に備えて警戒していた戦闘機が、すでに30分前から空へ飛び立っています。
NATO機の大規模な飛行隊は、カリーニングラード、ウクライナ、そしてロシア国境沿いの様々なロシア軍事目標に接近しています。
NATOの戦闘機はロシアの防衛力を圧倒します。攻撃は意図的にロシア軍の集中地を避け、その代わりに補給・燃料基地、滑走路、物流拠点、防空拠点などを破壊していきます。
ロシア軍は、NATOの戦闘機を数機破壊したものの、このNATOの攻撃は圧倒的な成功を収めたのです。
この攻撃は、ロシアのさらなる侵略を抑止するのに十分であると期待されており、そのために多くの犠牲者を出さない目標が選ばれています。
NATOはロシアとの全面戦争を回避することを望んでいますが、NATOの武器を積んだポーランドの輸送隊に対する攻撃は無視できません。
◇ 【発射まで残り19分】
NATOの空爆の報告は、この1時間8分間に渡ってロシアの参謀本部に入り続けました。
この攻撃はロシアにとって完全な屈辱です。なぜなら、自慢の防空網が大量のNATO機によって簡単に制圧されてしまったからです。
軍事的な犠牲者は、ほとんど出ませんでしたが、ロシア国境に深刻な脆弱性をもたらしました。今後も、NATOの戦闘機が侵入してくる可能性もあります。
これは、ロシアがNATO軍の圧倒的な技術的・戦術的優位に対抗できないことを意味します。
しかし、プーチン大統領は、この事態を覚悟していました。NATOがウクライナでロシア軍を撤退させ、ロシアを次の100年に向けて世界の三流国に追いやることを防ぐ唯一のカードは「核兵器」を使用することです。
プーチン大統領は自らメッセージを発するでしょう。そうしなければ、NATOは、最初の攻撃で生じたロシアの防空網の隙を突いて、空からロシアを攻撃する可能性があるからです。
プーチン大統領に駆け寄った側近は、ロシアの核兵器のブリーフケースであるチェゲットを携えています。チェゲットには、プーチン大統領の命令を参謀本部に伝えるための認証コードが封印されています。
プーチン大統領は、そのコードを参謀本部に送信します。その信号は、ロシアの最高指導部を結ぶ秘密通信網「カブカズ」に直接アップリンクされます。
参謀本部は、事前に収集した情報をもとに本物であることを確認し、その信号は現地の兵器司令官に伝達されます。
◇ 【発射まで残り13分】
1つの部隊に発射命令が伝達されます。ロシアの東、カムチャッカ半島内に設置されている路上を移動するランチャーは、すでに発射態勢に入った状態で静止しています。そのため、乗組員は数分で命令を認証し、発射のための最後の準備をすることができます。
準備が整ったところで、上級射場指揮官から発射命令が下され、乗組員はミサイルの発射失敗に備え、岩陰に避難します。
◇ 【発射まで残り0秒】
巨大なトーポリMが唸りをあげます。固体燃料ロケットのエンジンが始動し、47,200kgのミサイルが空へ舞い上がります。
離陸と同時に、ミサイルの誘導コンピュータはロシアのグロナス衛星ネットワークに接続します。慣性誘導とグロナス衛星のアップリンクの両方によって誘導されるため、ロシアのミサイルの中でも最高レベルの精度を誇ります。
グロナス衛星へのアップリンクは非常に重要で、トーポリMは大都市を標的にしていないため、独自の慣性誘導システムだけでは、正確ではありません。
ロシアの核ミサイルは、現在日本の南を通過中の米軍の空母打撃群を標的にしています。
ロシアは、軍事大国である米国に効果的に対抗できる唯一の武器で、米国に教訓を与えようとしているのです。
◇ 【発射から15秒】
発射からわずか15秒後、米国の宇宙赤外線システムの衛星が、上空に打ち上げられた大型ロケットの巨大な熱信号を検出します。
米国の早期警戒衛星は、ミサイル発射の探知に極めて優れており、ロシアのウクライナやシリアでの紛争で、より小型の巡航ミサイルの発射を追跡するために使用されたことさえあります。
巨大なトーポリMロケットは、吹雪の中でトーチを投げるように早期警戒衛星の熱センサーを照らします。この衛星はすぐに米国の複数のミルスター衛星とリンクし、コロラド州のバックリー空軍基地にある第2宇宙警告飛行隊をはじめ、米国のミサイル防衛網全体にアラートを送信します。
◇ 【発射から25秒】
雲を突き破り、複数の米軍の早期警戒衛星の目が、巨大な大陸間弾道ミサイルの特徴的な熱を察知しています。
衛星は内部で熱波と速度などを比較し、ロシアのミサイルがトーポリMであることを確認します。
5秒後、ロシアのミサイルは現在、大きく傾いた軌道で大気圏に突入しています。衛星から見ると、これは米国本土よりもロシアの海岸に近いところを攻撃していることを示しています。
このミサイルは、北極圏上空を通過するように北上するはずなので、米国本土を攻撃するには間違った方向に進んでいます。
◇ 【発射から1分15秒】
米国大統領は、このミサイル発射を認識します。また、米国の宇宙監視ネットワークは、追加の発射がないことを確認しています。
そして、新しい情報も確認され、このミサイルは米国本土に向けて発射されたものではないことも確認されました。
これは単に力を誇示するもので、ダミーの爆弾を使った抜き打ちのミサイルテストだという希望があります。しかし、ミサイルの軌道は、日本とグアムの米軍基地を脅威にさらすものです。
30秒後、緊急警報がミルスター衛星を通じて、世界中の戦闘司令部と配備された空母打撃群に放送されます。
日本の首相が警戒する中、日本とグアムで弾道ミサイル防衛が発動されます。しかし、ミサイルの軌道からして、日本列島への攻撃の可能性は極めて低いです。
グアムは標的として疑われますが、定期的な演習のために日本の南シナ海を横断する空母打撃群も同様に狙われる可能性があります。もし米国の空母が攻撃されたら、核攻撃から身を守るための準備時間は、ほんの数分しかありません。
◇ 【発射から2分33秒】
脅威の深刻さは、米国空母とその護衛艦に伝えられます。直ちに編隊内の艦船に、通常よりもさらに距離を置くようにとの命令が下されます。これは、被害を最小限にするためです。
◇ 【発射から3分】
戦闘機は空母の甲板から撤去され、甲板の下に避難するように命じられます。戦闘機を空母の甲板から巨大な航空機用エレベータで下に移動させることは時間がかかり大変ですが、人員と貴重な戦闘機の損失を最小限に抑えるために必要なことなのです。
そして、現在の脅威に必要ではない乗組員は、身構えるように命じられます。またダメージコントロールチームは集合を命じられます。たとえかすり傷でも、艦に大きな損傷を与える可能性があるからです。
◇ 【発射から3分22秒】
空母のイージス艦搭載ミサイル巡洋艦が弾道ミサイル防衛の準備を開始します。強力なAN/Spy-1レーダーで上空を掃射し、脅威の到来を察知します。しかし、今のところミサイルを察知することはできません。
◇ 【発射から6分41秒】
発射から約7分後、トーポリMミサイルは弾頭運搬部分とロケットが切り離されます。
そして、米軍のレーダーを混乱させるためのチャフを撒き散らし、4つの弾頭を投棄します。その内3つは、迎撃ミサイルを誘導するために設計されたダミーです。
このロシアのミサイルは、宇宙レーダー衛星の電子攻撃に対抗するために、慣性誘導に頼らざるを得えません。そしてそのまま、空母打撃群の最後の位置が判明しているところまで進みます。
空母の最高速度は時速55㎞程と推定されています。つまり、ミサイルの精度は刻一刻と低下しているということです。
◇ 【発射から6分43秒】
米軍の宇宙衛星は、強力なコンピュータでデータを処理し、電子ノイズの影響を軽減させます。そして、3つのダミーと1つの本物の弾頭をレーダーで調べ、数秒後には、4つの弾頭の痕跡を確認することができます。
米軍の衛星は、機密のセンサー技術を使って、4つの弾頭の非常に微妙な変化を測定し、本物の弾頭と偽物の弾頭を見分けようとします。
また、眼下に控えるイージス艦には、多数の迎撃ミサイルが準備されています。しかし、時間が勝負であり、弾道ミサイルを迎撃することは、まだ信じられないほど難しいのです。
現実的な条件下でのテストでは、米軍のミサイル防衛はこれまで散々な成績でした。もし、今回ミスをすると、数千人の死と、150億ドル(約2.1兆円)以上の軍用機器の損失になります。
◇ 【発射から8分33秒】
弾頭は発射台と標的が近いため宇宙空間での飛行時間が短く、これが迎撃の難しさに拍車をかけています。
ミサイル迎撃の成功にはデータが最も重要であり、データ収集には時間がかかります。弾頭が大気圏に降下し始めると、イージス巡洋艦の強力なSpy-1レーダーが下から弾頭を照らし出します。
甲板では、複数のSM-6ミサイルが夜明け前の空に向かって発射されます。その数秒後、2発目のミサイルが、さらにその数秒後、3発目のミサイルが発射されます。
巡洋艦は、迎撃に成功する確率を最大限に高めるために、複数のミサイルを発射しているのです。なぜなら、もし失敗すれば、何千人もの船員が死ぬことになるからです。
◇ 【発射から9分55秒】
この船のAN-SPG-62 Xバンドレーダーは、飛んでくる弾頭を照らし出し、SM-6迎撃ミサイルを誘導します。
イージス巡洋艦は、海上・宇宙のセンサーとネットワークで接続できるため、放出された大量のチャフによる電子ノイズのほとんどをカットすることができます。
どの弾頭が本当の標的なのか、まだ疑問が残るため、各弾頭には複数の迎撃ミサイルが割り当てられています。そのため、正しい弾頭を狙える確率は高くなりますが、迎撃に成功する確率は低くなります。
◇ 【発射から10分05秒】
秒速1,700mで接近するSM-6ミサイルの第1弾は、弾頭の1つを破壊することに成功します。弾頭は破片と爆発で深刻な構造的損傷を受け、時速数千㎞で制御不能となり、大気圏下層で自壊します。
4秒後、SM-6ミサイルの第2弾は、1つも目標に命中させることができません。
さらに4秒後、迎撃ミサイルの第3弾は、2つ目の弾頭を打ち落とします。
◇ 【発射から10分15秒】
2つの弾頭の下96㎞の距離にいる攻撃隊の乗組員には、本物の弾頭を打ち落としたのか、それともダミーなのかを知る術はありません。乗組員には、すでに衝撃に備えるようにとの命令が出されています。また、ダメージコントロールの乗組員は、船体の破損や浸水を修復するために待機しています。
発射から10分20秒後、日本の南方上空3,000メートルで核兵器が爆発しました。この大爆発により電磁波と熱線が放出され、一時的に衛星のセンサーをオーバーフローさせます。
徐々にノイズは消え、上空の衛星が爆発の被害を必死に探し始めます。空母への攻撃は1.6㎞強のズレがあったため、致命的な被害を回避しました。
しかし、巨大な圧力波が空母打撃群に襲いかかり、構造物に中程度の損傷を与えています。大型空母では、固定されている機体も含め、甲板上に残っていた機体のほとんどが強風にあおられ、海中へ吹き飛ばされてしまいます。
乗組員は、甲板の下にいるため、放射線の影響をほとんど受けていません。これは、核爆発が起こる半径のすぐ外側にいたことが幸いしました。ただ、圧力波の影響で多数の乗組員が犠牲になってしまうはずです。
いくつかの艦船は浸水しましたが、ダメージコントロールの乗組員がすでに修理に向かっています。浸水対策ができないほど損傷した区画は、他の区画に浸水しないように封鎖されます。
そのため、何人かの船員は溺死します。船を救うために浸水した区画の中に仲間を閉じ込めなければならないのです。
ロシアの核攻撃によって、事実上攻撃隊全体が戦闘不能になります。船は直ちに最も近い港で修理する必要があります。当然、空母の飛行甲板は損傷しており、航空作戦は不可能です。
さらに、もしロシアが複数のミサイルを使用していたら、米軍の空母とその護衛艦は、さらに多くの被害を受け、事態はもっと悪くなっていたかもしれません。
しかし、ロシアの核指揮統制システム、宇宙監視・誘導システム、そしてミサイルそのものが非常に劣化していることは、被害を限定的にするのに役立ちました。グロナス衛星などの誘導網は破壊されやすく、ロシアの兵器は正確とは言い難いのです。
これで、ロシアは米国の軍隊に対して核兵器を使用してしまったことになります。この行為にはNATOの第5条が全面的に適用され、劣勢にあるロシアと戦争状態になるでしょう。そうなれば、当然ながらロシアも無事ではすまず、取り返しのつかないことになるかもしれません。
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