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メディアが報じない〝不都合な真実〟イーロン・マスク「TruthGPT」開発の裏にあるAI業界のヤバすぎる偏り

資産25兆円の億万長者で、ツイッターやテスラ、スペースXの経営者として君臨するイーロン・マスク氏が独自のLLM(大規模言語モデル)「TruthGPT(トゥルース ジーピーティー)」を開発中であると明らかにしました。4月17日(2023年)に放送されたフォックス・ニュースで、タッカー・カールソン氏のインタビューに答えたものです。

» Elon Musk to develop ‘TruthGPT’ as he warns about ‘civilizational destruction’ from AI|ox News

上記のインタビューでマスク氏は「私はTruthGPT、つまり宇宙の本質を理解しようとするAIを開発するつもりだ」と話し、その理由を「宇宙を理解しようとするAIが、人間を消滅させる可能性は低いという意味で、これが安全への最良の道かもしれないと思う。なぜなら、人間は宇宙の興味深い一部だからだ」と説明しています。


また、現状のLLM(大規模言語モデル)に対する懸念として「もし我々がこれにブレーキをかけなければ、我々が持っているものすべてを破壊してしまうことになりかねない。これは核兵器と同じくらい危険だ」とも語りました。続けて

インタビュワーのカールソン「より深い問題は、AIが自律的に動いて私たちを奴隷にするということではなく、現実に対する私たちの理解を不誠実な方法でコントロールすることだ。政治的効果を狙って、私たちに嘘をつくようにプログラムされるかもしれないし、選挙の結果に有害な影響を与える可能性がある」とが主張すると、マスク氏は「AIの危険性は選挙だけでなく、さらに有害な影響を及ぼす可能性がある。適切に管理されなければ、人類の存在そのものに災いをもたらす」と警告しました。

そしてマスク氏は「GPT-1のはるか以前から、この現象が起きているのは見えていた。だから、何年も前から警告を発しようとしていた。私がかつてオバマ大統領として行った唯一の会談は、テスラやスペースXの宣伝ではなく、AI規制を促すための時間だった」と話しています。

日本の大手メディアも続々報道

フォックス・ニュースの独自インタビューを受け、日本のマスコミ各社も後追いで報道しています。

イーロン・マスク氏 対話式AI「TruthGPT」立ち上げ明らかに

アメリカの起業家でソーシャルメディア大手ツイッターを買収したイーロン・マスク氏は、新たな対話式AIを立ち上げる考えをメディアのインタビューで明らかにしました。急速に利用が拡大している「ChatGPT」に対抗するねらいがあるものとみられます。— 出典:NHK

イーロン・マスク氏、独自AI「TruthGPT」開発へ

マスク氏はもともと、2015年に非営利団体として始まったオープンAIの設立に関与していたが、営利企業に移行する過程で経営陣と対立し、オープンAIを去ったとされる。マスク氏はこうした経緯を「皮肉なこと」と認めた。すでに米西部ネバダ州にAIの新会社を設立しており、独自のAI立ち上げで対抗軸をつくっていくことになる。— 出典:日本経済新聞

イーロンvs先行するAI企業の対立を報じるメディアも

通信社のロイターはマスク氏がマイクロソフトやグーグル(アルファベット)に批判的であるという点に言及しています。

マスク氏、独自AI立ち上げへ MS・グーグルに対抗

また、対話型AI「チャットGPT」の開発元でマイクロソフトの出資を受ける新興企業オープンAIについて、今や「マイクロソフトと緊密な関係」を持つ「クローズドソース」の「営利組織」になり、「AIにうそをつくよう訓練している」などと批判した。グーグルの共同創業者ラリー・ペイジ氏についても、AIの安全性を真剣に考えていないと非難した。— 出典:ロイター

大手メディアが報じない〝不都合な真実〟

このような報道を見ると、マスク氏が現状のLLM(大規模言語モデル)の開発や管理状況に強い不満、そして危機感を持っていることは明らかです。そして、往々にして「人類を滅ぼすかもしれない」「核兵器に並に危険」といった表現で懸念が表明されてきましたが……マスク氏の政治的な思想心情と米国テック業界の現状を照らし合わせてみると、また別の一面が見えてきます。

イーロン・マスクの思想

マスク氏は南アフリカに生まれ、カナダ、アメリカへと渡り成功した起業家です。私生活では複数の女性と内縁関係にあると報じられるなど、いゆわる進歩的(Progressive)な姿勢であるようですが、近年の政治的スタンスは保守・共和党寄りです。なお、この場合の〝保守〟とはナショナリスト(国家主義者)というよりは、コミュニティや個人の〝自決(自ら決する権利)〟を重視するリバタリアンともみえます。

自身が経営するテスラ社やスペースX社の本拠地を、米国では左派民主党の州であるカリフォルニアから、保守共和党の州であるテキサスに移したことからも、その思想が透けてみえます(あるいは、単純に税制の問題だ、とする意見もあります)。

〝左派の州に偏る〟AI企業

こうしたマスク氏の右派寄りの思想を踏まえた上で「TruthGPT」の立ち上げを観察すると、グーグルやOpenAI(ChatGPT開発会社)が極めて左派性の強い〝ブルーステート〟のカリフォルニア州、中でもリベラルなサンフランシスコに集中していることにマスク氏が懸念を抱くことは必然のように思えます。

下記のマップでは青が左派民主党の州、赤が右派共和党の州(出典:ウィキペディア)。


ChatGPTは純粋にネット上のデータを学習するだけでなく、その後数ヶ月かけて人間に訓練を受けた上で世に出る仕組みです。そのため、AIを訓練する人間やガイドラインを制定する立場の人間の思想的な偏りから強く影響を受ける可能性があるのです。実際のAI訓練の内容は「ブラックボックス」であり、社名に反してまったくオープンではなく、また所在地の偏りが党派性の偏りになっている可能性は否定できません。

下記の画像はOpenAI社が採用を行なっている地域。勤務地は全てカリフォルニア州サンフランシスコとなっています。


完全な中立などあり得ない以上、こうした「左派的な州でつくられるAI」に対抗する意味でマスク氏は独自のAIをつくりだそうとしていると見るのは荒唐無稽なことではないでしょう。

えてして「万能の回答者」のようにもてはやされるAIですが、その裏側には人間がいること、そして政治や思想的な意味での偏りからは決して自由ではないという事実を利用者全員が忘れてはなりません。

* Category: technology,money テクノロジー,マネー

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