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ミサイル防衛の切り札「THAAD(サード)」の仕組みと〝モヤモヤする〟迎撃率

米軍は核攻撃から自国を守るため、優秀なミサイル防衛システムを保有しています。では、何百もの弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルが同時に発射された場合、アメリカ軍は対処しきれるのでしょうか?

この米軍のミサイル迎撃能力について、海外YouTubeチャンネル「Not What You Think」が解説しています。

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核弾道ミサイルを迎撃する米軍防衛システムの仕組み


弾道ミサイルは着弾するまでに「ブースト期」「ミッドコース期」「ターミナル期」の3つの飛行段階を経るため、迎撃をすることが決まりさえすれば迎撃のチャンスは何度かあります。

ロケットエンジンがまだ燃焼しているブースト期に弾道ミサイルを迎撃できれば理想的です。なぜなら、小さな核弾頭を迎撃するよりも、比較的低速で高温かつ大きいブースターを撃ち落とすほうが簡単だからです。しかし、時間が厳しく、非現実的です。

一般的な大陸間弾道ミサイルの燃焼時間は約250秒です。そして、前述したように弾道ミサイルを衛星で探知するだけでも30秒、その後迎撃ミサイルを発射するまでに60〜70秒かかります。しかも、この時間には迎撃すべきかどうかの「判断の時間」が考慮されていません。つまり、もし最短で迎撃ミサイルを発射できても、ブースト期の残り時間は150秒しかありません。

機種にもよりますが、迎撃ミサイルの燃焼時間は約100秒です。そして迎撃ミサイルは弾道ミサイルの熱をロックオンして飛行し衝突します。この方法は「ヒット・トゥ・キル」と呼ばれます。また、旧式の迎撃ミサイルの場合は目標に接近し、近接信管で弾頭を爆発させるというモノもあります。


そして、迎撃をする際は、弾道ミサイルが破壊されたかどうかを確認してから、別の迎撃ミサイルを発射する「シュート・ルック・シュート」という戦術が使われます。この戦術により、弾道ミサイルを撃墜する迎撃ミサイルの数を最小限に抑えることができます。これは、迎撃ミサイルの本数を減らすことは非常に重要なことです。

しかし、実際にはブースト期に迎撃することは、到達距離と時間という厳しい課題があります。第一の課題は、司令部が迎撃ミサイルを発射するかどうかを判断する時間がほとんどないということです。弾道ミサイルの発射を探知するには、天候にもよりますが、最大で30秒かかると言われています。さらに、この後の判断に1分以上かかると、弾道ミサイルのブースト期が終了する前に迎撃ミサイルが到達することができません。

この「時間的課題」を克服するために開発されたのがレーザーシステムです。強力なレーザーを持つ「YAL-1空中レーザーシステム」はブースト期にある敵の弾道ミサイルを約110〜320㎞の距離で撃墜することができるといわれていました。


しかし、大気の影響でレーザーのエネルギーが予想以上に拡散してしまい、レーザーの飛距離が数十㎞しかないことが判明。レーザーを当てるには、レーザーを搭載したボーイング747が敵の領空内で飛行する必要があるとされ、現実的ではないために中止されました。

第二の課題は、射程距離です。迎撃ミサイルは弾道ミサイルの発射地点に比較的近い場所から発射しなければなりません。ただ、あまりにも近すぎると迎撃ミサイル自体を狙われる可能性があります。適切な距離は48㎞から1,000㎞といわれています。

これは非常に大きな問題です。なぜなら北朝鮮から発射されたロケットが迎撃できても、大国の真ん中から発射された場合は迎撃できないからです。


アメリカ軍のSM-3ミサイルは、海軍の艦船やイージス・アショアから発射することができ、ブースト期の弾道ミサイルを迎撃する能力を持っています。ただ、射程時間の問題で有力な選択肢とは見なされていません。米軍のミサイル防衛システムでは、ブースト期の弾道ミサイルは迎撃することは難しいのです。

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