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ソ連からロシアが引き継ぐ「核兵器使用の禁断シナリオ」


人類史上最も大きな人工的爆発を記録した核兵器「ツァーリ・ボンバ」。この核兵器はソビエト連合が開発したもので、その爆発実験の様子は最近になってロシアから公開されました。

この驚異的な威力について、科学系チャンネル「The Infographics Show」が解説しています。




*Category:テクノロジー Technology|*Source:The Infographics Show,Nuclear Vault ,Financial Times ,NTT

ソビエト連邦が行った人類史上最悪の水爆実験


1940年代後半から1960年代前半にかけて、ソ連はかなりのスピードで核爆弾の実験を行っていました。BBCは、1958年の1年間だけで26個の核爆弾を実験したと報じています。

ソ連が開発した核爆弾は、日本の広島や長崎に投下されたものよりも巨大で、プロジェクト27000、プロダクトコード202、RDS-220、RDS-202、クジンカマット、バーニャなどのコードネームで呼ばれていました。欧米では、通称として「ツァーリ・ボンバ(爆弾の皇帝)」と呼ばれています。

ツァーリ・ボンバは、重さ27,000kg、長さ8m、直径2.1mで、爆風量は50メガトンでした。しかし、ソ連は100メガトンの爆弾も作れたと言われています。


BBCは「ツァーリ・ボンバは、最大の航空機にさえ搭載できないほど巨大な金属製の怪物であるため、都市破壊兵器であり、最後の手段であった」と報じています。

そのため、一度だけ行われた実験で、投下した飛行機が生き残る可能性は50%しかなかったそうです。爆弾は1トンのパラシュートでゆっくりと降下されました。そして、パイロットは爆発するまでに50㎞離れる必要があります。


ツァーリ・ボンバの投下実験はロシア本土から約400㎞離れたノバヤゼムリア群島のセヴェルニー島で行われました。その爆発は1,000㎞先まで見えたそうです。その際に発生したキノコ雲は高さ64kmに達し、約100kmの範囲に広がりました。


このツァーリ・ボンバの爆発実験の動画は、2020年にロシアの原子力機関から公開されました。この動画の一部は、YouTubeでもいくつか確認することができます。(※以下の動画には核爆発の映像が含まれるため、注意してください)


この実験の爆心地から55km離れたところには、セヴェルニーという村がありました。その村の家々は全壊したといわれていますが、死者は報告されていません。ただ、爆心地から何十㎞も離れたところでも、家屋が損壊する威力があったことには驚愕です。

また、パイロットは無事に脱出することができましたが、飛行機が制御不能になり、約1,000m急降下したそうです。爆発による熱波は、100km離れた人間の皮膚に3度の火傷を負わせるほどで、発生した電磁エネルギーは、ソ連北部の通信を1時間以上麻痺させたといわれています。

さらに、遠く離れたノルウェーやフィンランドでも爆風で窓ガラスが割れたと伝えられています。しかし、あるアメリカのアナリストは「よほど大きな都市を破壊したいのでなければ、使い道を見つけるのは難しい」と述べています。つまり、威力が大きすぎて使い物にならないのです。

現代のロシアが引き継いだ「核兵器使用の禁断シナリオ」

プーチンが正気なら、キーウにこのような核ミサイルを撃つ可能性は極めて低いでしょう。ウクライナを占領したところで核に汚染されていたら意味がありません。では、現実的シナリオは何かというと、電磁パルス攻撃です。ツァーリ・ボンバの実験でも起こったように、爆発時に生じる強烈な電磁波が通信機器やコンピューターを破壊する点でも核兵器は脅威なのです。

米経済紙「Financial Times」でも、起こり得るロシアによる核攻撃として、電磁パルス攻撃が指摘されています。これによれば、爆発の電磁パルスは電子機器を焼くものの、放射性降下物は48時間後には最初の爆風の1%程度に減少するとのこと。ただし、放射性粉塵などが広範囲に広がるという問題は残されています。

すくなくとも「都市を瓦礫の山にして、放射能汚染で滅ぼす」というような攻撃は(プーチンが正気なら)起こり得ませんが、電磁パルス攻撃でウクライナの電子機器を破壊して、ハイマースやドローンを無力化したのち、圧倒的物量戦で挽回する、というのは割と現実的なシナリオとなっているのです。

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