トヨタは、電気の力に着目し、ハイブリット車の開発にいちはやく着手した自動車メーカーの1つです。中でもプリウスは、トヨタを象徴する車になっています。
しかし、トヨタは現在EVではなく水素自動車に力を注いでいます。トヨタがEVではなく水素自動車にこだわる理由を、海外YouTubeチャンネル「Logically Answered」が考察を述べています。
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トヨタが電気ではなく水素エネルギーに注目する理由
トヨタはハイブリッド車の先駆者であると同時に、初期のテスラの投資家でもありました。2010年、トヨタはテスラに5,000万ドル(約71億円)を投資し、1.43%の株式を取得していました。もし、この株をまだ持っていたら100億ドル(約1.4兆円)以上の価値になっていました。しかし、トヨタは2017年半ばにこの株を売却しています。
当時は、トヨタがリスクを取って利益を確定しているだけのように見えましたが、今思えば、この株式を売却したことで、トヨタの何かが変わったように思えます。
それ以来、トヨタはEVの対抗勢力になりつつあるのです。また、完全なEVの開発に関しても、遅れをとっています。トヨタが初めて完全EVのSUVを発売したのは、2022年4月のことです。ただ、この車はリコールされており、決して順調とは言えません。
トヨタは、10年後までにバッテリー技術に135億ドル(約1.9兆円)を投資する計画を持っていますが、これは世界の競合に比べればかなり物足りない金額です。
フォードは2,000億ドル(約28兆円)以上の負債を抱えています。しかし、フォードは2026年までのEV投資を300億ドル(約4.2兆円)から500億ドル(約7.1兆円)に増やしたばかりです。
同様に、フォルクスワーゲンも今後4年間でEVに1,800億ドル(約25兆円)を投資する予定です。これらの投資を考えると、トヨタの戦略は明白です。EVを捨てたわけではないのですが、EVの流れに乗ろうとはしていないのです。では、なぜトヨタはEVに躊躇しているのでしょうか。
トヨタがEVに躊躇している大きな理由のひとつは、水素に賭けているからです。トヨタの副会長は「トヨタはEVメーカーではなく、カーボンニュートラルな企業として見られたい」と述べています。トヨタは、カーボンニュートラルな未来は、EVで達成する必要はないと主張しています。
カーボンニュートラルとは「選択肢を1つに絞ることではなく、選択肢を広げておくこと」という考え方自体は決して悪いことではありません。しかし、今のところトヨタが力を入れている水素自動車に関しては問題が多くみられます。
2021年の東京オリンピックでは、トヨタは水素バスと水素自動車を500台供給しました。車両そのものは問題なく動きましたが、コスト面では問題がありました。
トヨタは、これらのバスを6年間、90万ドル(約1.2億円)で日本にリースしています。同じようなディーゼルバスであれば、22万ドル(約3,000万円)で15年間リースできたはずです。
年額にすると、水素バスは15万ドル(約2,000万円)、ディーゼルバスは1万5千ドル(約200万円)以下です。つまり、水素バスの方が10倍も高いということです。しかも、それはリース料金だけの話です。
EVはガソリン車より給油が劇的に安いですが、水素バスは2.6倍も高いのです。しかも、金銭的な心配はその1つだけではありません。水素自動車は、燃料補給のネットワークが非常に未整備です。EVとは異なり、地域の電力網に接続する充電ステーションを多数設置することはできません。
水素自動車に燃料を補給するためには、1台10万ドル(約1,000万円)もする水素専用の燃料ディスペンサーを購入しなければならないのです。
また、水素の貯蔵にもかなりの費用がかかります。さらに、定期的な水素の配送にも対応しなければなりません。つまり、今のガソリンスタンドのような施設を利用しなければならないということです。
ただ、水素自動車にも利点があります。それは、ガソリン車と同じように3〜5分で燃料を満タンにすることができることです。車での移動が多い方には大きなメリットになるはずです。
ガソリン車と水素自動車で似ているのは、給油の仕方だけではありません。メンテナンスの仕方も似ています。水素自動車はEVよりもはるかに複雑で、故障の可能性が高いため、当然メンテナンスも多くなります。
つまり、水素自動車はコストが高く、メンテナンスも必要で、インフラも整備されていないため、大局的に見るとEVには勝つのは難しいということです。
では、なぜトヨタはそこまでして水素自動車にこだわるのでしょうか。その答えは「日本にとって何がベストなのか」を考えているからです。
日本が水素にこだわるのは、何も新しいことではありません。実際、日本は何十年にもわたって水素についての研究をしてきています。
日本が欧米の基準に合わせようとしない最大の理由は、日本のエネルギー依存にあります。日本は島国なので、近隣に国がありません。一見すると、国土を独り占めできるため、非常にいい環境のように思えます。
しかし、日本のような環境には、弱点があります。その弱点とは、他の国とつながっていないため、海を経由して輸送しなければならないということです。特に、エネルギーの輸入に関しては、この問題は深刻です。
世界の多くの国では、エネルギーは自前で作るか、近隣の国に頼っています。例えば、ヨーロッパはかつて原油や天然ガスをロシアに依存しており、巨大なパイプラインが2つの地域間の貿易を促進していました。
アメリカも同様です。カナダはアメリカにとって最大のエネルギー輸出国です。
日本は明らかにそのようなパートナーを持っていません。また、原油や天然ガスのような需要の高い資源も持っていません。そのため、基本的にすべてのエネルギーを輸入する必要があります。
これはコストが高いだけではなく、日本にとって貿易上の大きなハンディキャップとなります。日本はエネルギーの94%を輸入しているため、関税をかけたり、貿易戦争を起こしたりすることはできません。
日本はこのエネルギー問題の打開策を探し求めてきました。その最たるものの1つが水素です。日本は一般的なエネルギー源にアクセスできませんが、水素は利用できます。今回ばかりは、日本の海が役に立ちました。
日本の海底には「ファイヤーアイス」と呼ばれるシャーベット状の物質がたくさんあります。この氷の結晶には、大量の天然メタンが含まれており、これを水素に変換することができるのです。
1立方メートルのメタンハイドレートから160立方メートルのメタンガスを発生させ、それを水素に変えることができると言われています。日本は排他的経済水域が日本の両側に広がっているため、ファイヤーアイスをたくさん手に入れることができます。
しかし、ファイヤーアイスを採取するのは簡単ではありません。まず、海底1,000メートルの深海を航海する必要があります。さらに、海底を何百メートルも掘削しなければならないのです。
日本は、より浅い場所からファイヤーアイスを採取し、海底パイプラインで送れる新しい掘削方法を研究していますが、これはまだ未完成です。
日本は久しぶりに代替エネルギーを手に入れたのです。そして、もしこのプロセスがうまくいかなかったとしても、うまくいく方法を見つけるまで、さまざまなプロセスを試し続けるつもりです。
日本にとって、これは「正しいことだから、流行だから、再生可能エネルギーに切り替えたいから」という問題ではありません。日本をエネルギー危機から救いたいのならば、早急に最善策を見つけなければならないという問題なのです。
日本最大の企業として、トヨタはこのビジョンをサポートするためにできることは何でもしています。その中には、EVの普及を遅らせるよう、諸外国に働きかけることも含まれています。
欧米から見ると、トヨタはシェルやエクソンといった石油企業と組んで、EVへの動きを阻害する悪者のように見えてしまいます。しかし、実は全くそうではありません。トヨタは再生可能エネルギーやEVに反対しているわけではなく、日本にとって最も有益なエネルギー形態を推進しようとしているだけなのです。
世界のエネルギー事情が変わることは、そうそうあることではありません。100年に1度あるかないかです。
日本は今「水素に注目する価値があると世界に確信させるか」それとも「世界中がEVに移行する中で取り残されるか」という2つの分岐点に立たされています。
EVに移行すると、日本はますます世界からのエネルギー輸入に依存することになります。これは、日本が一番やりたくないことなのです。
トヨタはEVのパイオニアでありながら、その流れに乗ろうとしない理由は、日本が何十年もエネルギー問題で苦労してきた中で、水素にかすかな望みを託しているからです。しかし、この賭けが報われるかどうかは、時間が経ってみないとわからないことです。
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