app

「ChatGPT」対抗に焦るGoogleの大失態

Googleは2月8日、発表イベント「Live from Paris」を開催しました。このイベントではAI関連の発表がいくつか行われましたが、内容は期待はずれといえるような結果に終わっています。


*Category:テクノロジー Technology *Source:Ars technica ,Forbes ,The Verge ,@Google ,

GoogleがチャットAI「Bard」初公開デモで痛恨ミス


Googleがパリで行ったイベントでは、期待されていたような「ChatGPT」とマイクロソフト「Bing」の統合に対抗する決定的な動きはありませんでした。その代わりGoogleはプレゼンテーションで、これまでに発表されたAI技術を駆け足で紹介しています。

ステージにはGoogle上級副社長のプラバカー・ラガヴァン氏とGoogleサーチ副社長のリズ・リード氏が交互に登場し、写真とテキストの両方で同時に検索できるGoogleレンズのAI機能「マルチサーチ」や、主要都市を3Dで表現するGoogleマップの「イマーシブビュー」、Google翻訳の新版など一連のプロダクトと、細かい発表の数々が披露されました。


AI搭載検索エンジン「Bard」については、イベントの2日前に発表されています。しかしイベントでは新しいことは何も明らかにされませんでした。ラガヴァン氏はイベントで「今週、信頼できるテスターにBardを公開し、次の大きな一歩を踏み出したところだ」と述べており、具体的なことは何も明かしていません。

Googleがこのように慎重になる理由の1つは、AIの精度の問題です。「ChatGPT」を始めとした大規模言語モデルはその仕組み上、間違った回答をすることが多々あります。

質問に答えるために実証済みの事実のデータベースを照会するのではなく、膨大なテキストコーパスで訓練され、与えられた文の中でどの単語が次に来るかを判断するためにパターンを分析するのである。つまり、決定論的ではなく、確率論的なのだ。この特徴から、ある著名なAI教授は、彼らを「デタラメジェネレーター」と呼んでいる。

Googleのサンダー・ピチャイCEOは「Bard」について「外部からのフィードバックとわれわれ自身の内部テストを組み合わせて、Bardの回答が品質、安全性、現実世界の情報に基づいた高い水準を満たすようにする」と強調しています。

しかしGoogleはイベントの直前、「Bard」のデモが表示された広告で、なんと情報に誤りが発見されました。広告では、ユーザーがジェームズ・ウェッブ望遠鏡の新発見について「Bard」に尋ねています。


質問:ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡の新発見について、9歳の子供に教えてあげられることはありますか?

回答:ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による最近の発見を、9歳のお子さんは気に入ってくれるかもしれませんね。

  • 2023年、JWSTは「グリーンピース」と呼ばれるいくつかの銀河を発見しました。この銀河は、小さくて丸く、エンドウ豆のように緑色をしていることから、この名前が付けられました。
  • この望遠鏡は、130億年以上前の銀河の画像を撮影しました。これは、これらの銀河からの光が、130億年以上もの時間をかけて私たちに届いていることを意味します。
  • JWSTは、太陽系外の惑星を初めて撮影しました。このような遠方の惑星を “太陽系外惑星 “と呼びます。エクソとは “外から来た “という意味です。

これらの発見は、宇宙の無限の不思議について、子どもの想像力をかき立てることでしょう。

ところがこれについて、天体物理学者のグラント・トレンブレー氏が、「太陽系外の惑星の最初の画像」を撮影したのはジェームズ・ウェッブ望遠鏡ではなく、超大型望遠鏡VLTだと指摘。

米経済誌「Forbes」は、この誤りが報じられた後、Googleの株価が7%近く下落し、約1000億ドル(約13兆円)の企業価値が失われたと指摘しています。AIに誤情報が混じってしまうことは仕組み上仕方ないとはいえ、それをモデレートする側のGoogleが、この致命的な間違いに気づかなかったというのは問題です。

このミスの要因の一つとしては、GoogleがAIの発表に焦っているということがあげられます。Googleは「ChatGPT」の登場で「コードレッド」を宣言し、リソースの大部分をAIに回しました。また、マイクロソフトの「新しいBing」発表に際しては、イベント開催告知の2日前にも関わらず、突如として同社ブログでチャットAI「Bard」のリリースを告知しています。

Source: app